乳がんの患者さんの多くが、放射線治療の【費用】について不安を抱いている
こんにちは、婿殿HIRO(@donomuko16)です。
私は【医学物理士】と【放射線治療専門放射線技師(RTT)】というふたつの専門職として、10年間ずっとがん治療の最前線に身を置いてきました。
そして、現在も毎年800名におよぶ患者さんの放射線治療にあたっています。
この記事では、乳がんの患者さんが放射線治療を受ける場合の具体的な費用について、現場の医療スタッフしか発信できないお話しをしていきます。
「乳がんの放射線治療を受けるんだけど、トータルでどのくらいお金がかかるの?」
「放射線治療って高いイメージだけど、周りに誰も聞けるひとがいないからすごく不安だわ、、、」
あなたがこれから乳がんの放射線治療を受ける場合、このような心配ごとが次々と出てくるのではないでしょうか。
特に治療費については、具体的にどのくらいの金額になるのか、想像もつかない方がほとんどだと思います。
インターネット(情報サイトや個人のブログなど)でも実際に支払う費用を調べられますが、どれもざっくりとした大まかな範囲で書いてあるだけなので、いまいちピンときませんよね?
そして、ここだけの話ですが、診療スタッフ(主治医や看護師さん)であっても、金額まで把握している人は実はほとんどいないのです。
つまるところ、多くの患者さんが、放射線治療の費用をよくわからないまま、医師に説明されるがままに同意して始めてしまっています。
「いくらかかるかもわからないし、仕事を続けながら治療に通うしかないかな、、、」
乳がんの患者さんには若い方も多く、働きながら治療することを選択されるケースもよく目にします。
この理由は、やはり支払いへの金銭的な不安があるからではないでしょうか?
私も医療現場にいると、乳がんの患者さんから(冒頭のような)放射線治療の費用に関する質問をよくされます。
その都度ていねいに説明し、しっかりと理解してもらうよう心がけていますが、同時に「世の中にはこの疑問を解決できず不安な患者さんがたくさんいるのかも」と考えてしまうのです。
そこで今の私にできることは、実際に放射線治療にたずさわるスタッフの立場から、なるべく多くの乳がんの患者さんに、次の内容をお伝えすることです。
- 放射線治療とは、どのような流れで進んでいくのか
- どの診療行為に対して、費用が発生するのか
- 最終的に会計窓口で支払う金額はいくらなのか
なお、【IMRT】や【粒子線治療】という特殊な放射線治療については、ここでは述べません。
あなたが保険適応となる【一般的】な放射線治療を受ける場合のおはなしです。
放射線治療の流れと、具体的な費用について
病院によって若干違うかもしれませんが、基本的な流れはどこも同じです。
初回診察
初めに、放射線治療専門の医師から診察を受けます。
この時点で、放射線治療についての説明や、具体的な治療方針(通院日数など)を医師と一緒に相談します。
同意書への記入までおこなうので、聞きたいことがあれば遠慮なく聞いてしまった方がいいです。
がん治療専門の大きな病院になってくると、専門の看護師さん(女性)からも今後のケアなどを教えてもらえるので安心です。
女性同士なので、男性の医師ではちょっと聞きにくいような悩みも相談できるのがメリットですよね。
このあたりが気になる方は、放射線治療を専門にしている看護師さんがいるかどうか、あらかじめ電話などで確認しておいた方がいいと思います。
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CT撮影
あなたが放射線治療を受けることに同意した場合、次におこなうのはCTの撮影です。
「CTは今まで何度も撮影しているのに、どうしてまた必要なの?」
実は、放射線治療をおこなうためには、放射線治療専用のCT画像が必要なのです。
あなたの身体に合わせた、あなたのためだけの治療方法を提案するために、実際に治療するときと同じ姿勢をとりながら撮影していきます。
ここで料金が発生する場合があります。
治療費の中に含めてくれるところも多いですが、患者さん側ではなかなか分りにくいところです。
コンピュータ断層撮影: 9,000~1,0200円
コンピュータ断層診断: 4,500円 ※月に1回のみで、同じ月に撮影していれば必要ない
(保険適の場合、実際に支払う金額は1割、2割、3割負担ごとにそれぞれ倍率をかけたものです。)
計画
撮影したあなたのCT画像にたいして、専用のパソコンをつかって治療計画を立てていきます。
かんたんに言ってしまえば、放射線を当てると乳房の中がどうなるかを計算で予想していきます。
「線量分布(せんりょうぶんぷ)」などという用語を聞くことになるかもしれませんが、要するに上のように計算した結果のことです。
この計画の過程ではそこそこ高い費用が発生します。
放射線治療管理料: 27,000~31,000円
放射線治療専任加算: 3,300円
遠隔放射線治療計画加算: 20,000円 ※田舎の病院、小規模病院に多いです
体外照射用固定器具加算: 10,000円 ※病院によります
医療機器安全管理料2: 11,000円
(保険適の場合、実際に支払う金額は1割、2割、3割負担ごとにそれぞれ倍率をかけたものです。)
上記の費用は、1回目(=初回)の治療のときにまとめて請求されることがほとんどです。
「放射線治療って、ビックリするくらい高いんだけど!!」
「こんな高い金額だなんて、とても毎回払えない、、、」
あなたもこれを知らなければ不安になっていたと思いますが、2回目からは安くなるので大丈夫ですよ。
治療
CTを撮影してから翌日~数日後(←これは病院によって違います)、専用の装置をつかって治療をおこなっていきます。
乳がんの場合の治療回数は【16~30回】と、病院や治療方針によって大きく異なります。
しかし、毎回の治療自体のながれは同じで、次のようになります。
- 全身の位置をただしく合わせる
- 画像を撮影して、乳房の位置に標準を合わせる
- そのまま、計画どおりに放射線をあてる
毎日の治療に対して、それぞれ費用が発生します。
つまり、回数が増えれば増えるほど、金額も高くなるということです。
高エネルギー放射線治療: 8,400~13,200円
1回線量増加加算: 4,600円 ※治療回数が16回の方のみ、こちらが追加される
呼吸性移動対策加算: 1,500円 ※ひだり乳房を治療する方のみ
画像誘導放射線治療加算: 1,500 ※特殊な位置合わせ装置を導入している場合にかぎる
(保険適の場合、実際に支払う金額は1割、2割、3割負担ごとにそれぞれ倍率をかけたものです。)
たくさんあるのでややこしいですよね、、、。
これを回数分かけて計算するのは大変なので、最後にまとめた金額だけのせておきます。
定期診察
治療期間中は、定期的(だいたいは週に1回程度)に医師の診察をおこないます。
治療がすべて終わってからも、医師による診察は続けるところが多いです。
この理由として、治療効果の判定や、副作用などの観察があげられます。
外来放射線照射診療料: 2,920円 ※違う加算でとっている病院も多いので参考程度に
(保険適の場合、実際に支払う金額は1割、2割、3割負担ごとにそれぞれ倍率をかけたものです。)
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【乳がん】の患者さんが【放射線治療】で支払う金額
ウンザリするくらい、たくさんの費用が加算されていますよね、、、。
これが「放射線治療は高い」と言われている理由です。
(実際には私たち治療する病院側にも、それだけ高額なコストが発生しているということなんですよ。)
それから注意していただきたいのは、病院の規模だけでなく、あなたの乳がんのステージと治療方針によっても金額は違ってくるということです。
「あの病院はもっと安いと聞いていたのに、、、」
「友人はもっと安かったのに、なんで私はこんな高いのよ!」
そう思ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、全てはあなたの治療を、あなたが選んだ施設で、最適におこなうための費用だと思って下さい。
最後に、【乳がん】の患者さんが一般的な放射線治療で支払うことになる、トータルの金額をまとめておきます。
これまでに述べたように、条件によって金額は変わるのですが、基本的にはこの範囲に収まりますので参考にしてもらえればと思います。
保険適応で1割負担の場合: 41,380~64,990円
保険適応で2割負担の場合: 82,760~129,980円
保険適応で3割負担の場合: 124,140~194,970円
さて、いかがでしょうか。
あなたの条件によっては結構高額な支払いになる、ということがおわかりいただけたかと思います。
しかし、これらの費用をあらかじめ知っていることで、『医療限度額認定』や『がん・医療保険』など、先回りしてうまく活用できるのではないでしょうか。
あなたが受ける放射線治療の経済的な負担を少しでも柔らげるお手伝いができれば、がん治療に従事する私にとっても大変うれしいかぎりです。
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